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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)691号 判決 1961年7月02日

福島県郡山市細沼町四〇番地

上告人

大森達夫

右訴訟代理人弁護士

桑名邦雄

稲塚隈東

福島県郡山市壇場町二二番地の三

被上告人

郡山税務署長 千葉恒雄

被上告人

右代表者法務大臣

植木庚子郎

右両名指定代理人

浜本一夫

河津圭一

右当事者間の財産税課税価格更正決定取消等請求事件について、仙台高等裁判所が昭和三三年五月二日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があり、被上告人らは上告棄却の判決を求めた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人桑名邦雄の上告理由第一点について。

論旨は、第一審判決を引用した原判決が、第二回審査請求の取下が上告意思に基きなされた旨の事実を認定するにつき、甲九号証の一、二、三(建物電話差押調書)、甲一〇号証の一、二(差押調書謄本等送付通知、從物に効力が及ぶ旨の通知)甲一三号証(告発事件解決後決定見込の通知)及び証人今井貞良の証言を認定資料に供しなかつたことは違法であると主張する。

しかし、所論甲号証は原審認定の妨げとなるものでないことは明らかであり、今井証人の証言も原審認定の妨げとなるものではない。原判決にその旨の判示はないが、原判決には当然、右趣旨の判断が含まれていると解されるから、所論の違法はない。

同第二点について

論旨は、原判決が、上告人が原審口頭弁論で陳述した第二回準備書面記載事実を判決に記載せず、これにつき審理判断しなかつたことが違法である、というが、しかし、所論準備書面記載の事実は、第二回審査請求の取下が本人の意思に基きなされたものであることを否認する事情に属する事実に過ぎないから、これを判決事実摘示中に記載しなかつたからといつて違法とはいえない。また、原判示の場合、理由中の判断においては、取下が本人の意思に基くものであるかどうかにつき判断を示せば足り、否認の事情にわたる具体的事実につき一々判断を示すことを要するものではない。原判決に所論の違法はない。

同第三点について。

論旨は、原審判決が一方で第二回審査請求の取下は上告人の妻の依頼に依り行われたといい、他方で右取下は上告人本人の依頼に基き行われた旨判示したのは、前後矛盾する判断である。というが、しかし、所論指摘の判示は、上告人本人に取下の意思を生ずるに至るまでの経過的事情として初めは妻の依頼で桑名が奔走を始めたが、結局、上告人本人も取下の意思となり、取下書が提出されるに至つた旨を認定したものであるから、原判決に所論のような矛盾があるとはいえない。

同第四点について。

原審挙示の証拠により原審認定の事実を認定したことが、とくに不合理で、経験則に反するとはいえない。所論は、原審の事実認定ないし証拠の取捨選択を非難するに帰し採用できない。

同第五点について。

原審は、「審査請求を取り下げれば告発を取り消す旨約したので上告人がこれを信じて審査請求を取り下げた」との事実は認められない旨を認定したものであつて、原判決の全趣旨によれば今井証人の証言中右認定に反し上告人の主張に添う部分は採用しない旨の判断を含むものと解されるから、原判決に所論のような違法があるとはいえない。

同第六点(1)について。

第三回更正決定に理由の附記がないから違法である旨の主張は、原審においてなされていない。仮に主張があつたとしても、国税徴収法三一条の三は、審査決定に関する規定であつて、更正決定に関する規定ではなく更正については、もつぱら、財産税法四六条、四九条の規定が適用され、右財産税法の規定によれば、更正決定に理由を附記する必要のないことは明らかであるから、所論はとるに足りない。

同(2)ないし(5)について。

財産税法に基く審査決定については、国税徴収法に対し特別法の関係にある財産税法の規定が適用され、從つて理由の附記を要しないこと原審判示のとおりであるが、仮に理由の附記を要するとしても、理由の附記がないことにより審査決定は取り消し得べき瑕疵を帯びるに過ぎず、当然無効となるものとはいえない。

そして、原審の確定するところによれば、上告人は、第三回審査決定の受領を拒んだので、国税徴収法四条の一〇により公告がなされた(この場合、公告の初日すなわち昭和二六年八月一〇月から七日を経過した日に決定の送達があつたものと看做される。)というのであるから、第三回更正決定に対する出訴期間は、行政特例法五条一項、四項により、審査決定のあつたことを知つた日(すなわち審査決定の送達があつたと看做される日)から六箇月と解すべきものであり、從つて第三回更正決定の取消を求める本件訴訟は、出訴期間経過後のものとして不適法と解すべきことは、原審判示のとおりである。なお、所論「正当の事由」云々の問題は、行政特例法五条三項の除斥期間に対する除外例とし問題となるに過ぎず、同条一項の適用がある場合には(不変期間の追究の問題はあつても)正当事由の問題はおこりえない。從つて、原審が本件の場合行政特例法五条三項但書の適用がないとしたことも正当である。

次に、第四回審査請求は、第二回更正決定に対するものであるが、原審の確定するところによれば、第二回更正決定が上告人に通知されたのは昭和二三年六月一六日であるから、その日から一箇月の経過により審査請求の申立期間は徒過されており、昭和二七年九月一日提出された第四回審査請求が不適法のものであることは明らかである。從つて、右審査請求によつて第二回更正決定に対する出訴期間の進行を阻止しうるものではない。もつとも、上告人は、第二回更正決定に対し、一旦、法定期間内である昭和二三年七月一一日に適法に審査請求をしているが、原審の認定するところによれば、右審査請求は、上告人本人の意思により同年一二月一六日に取り下げられたというのである。従つて、第二回の更正決定に対する出訴期間の進行が適法な審査請求の提起により阻止されたということは、本件では、あり得ない。

ところで、第二回更正決定のなされた昭和二三年六月一六日当時においては、行政処分に対する出訴につき訴願前置主義は採用されておらず、出訴期間については、民訴応急措置法により処分を知つた日から六箇月とされていたが、同年七月一五日行政特例法が施行され、行政処分に対する出訴につき訴願前置主義が採用され、同法は、同法施行前の処分に対する出訴についても適用されることとなつたので、同法施行後は、更正決定に対する出訴についても、審査決定を経由しなければならないこととなり、従つて審査請求期間の徒過により審査請求の途がなくなれば、これにより出訴も許されないこととなるわけであるが、原審認定によれば、第二回更正決定に対し一旦適法に提起された審査請求は取り下げられ(特例法施行後)、その後法定期間内に適法な審査請求がなされなかつたことは明らかであるから、第二回更正決定に対しては、行政特例法二条により、もはや出訴の途がなくなつたものと解すべきことは、原審判示のとおりである。また、原審認定の事情の下では、ただちに、審査決定を経ないで出訴することにつき正当の事由があるといい得ないことも原審判示のとおりである。

なお、論旨は、昭和二五年法律六九号施行前には出訴期間の定めはなかつた旨をいうが、同法施行(昭和二五年四月一日)前においても、行政処分に対する出訴については、民訴応急措置法ないし行政特例法により、出訴期間の定めは存在していた。もつとも過払払戻請求訴訟については、右法律六九号施行の前後を問わず、現在においても、出訴期間の定めは存在しないが、原審は、国に対する過払払戻請求訴訟が出訴期間の徒過により不適法であるとしたわけではなく、更正決定の取消を求める途がなくなつた以上、更正決定の取消を前提とする過払払戻請求は理由がないとしたものである。過払払戻請求には出訴期間の定めがないとしたとの論旨は、原判決を正解せざるにいでたもので採ることができない。

同第七点について。

論旨は、過払払戻請求の訴訟において、裁判所が更正決定の当否につき実質的審理をしなかつたことを非難するが、しかし、過払払戻請求は、更正決定の取消を前提とするものであるが、更正決定に対しもはや出訴の途がなくなつた以上、裁判所は過払払戻請求訴訟の前提問題として判断する場合においても、更正決定を適法のものとして審理判断せざるを得ず、その当否につき実質的審判をする余地はない、従つて、過払払戻請求訴訟において裁判所が更正決定の当否につき実質的審判をしなかつたことは何等違法ではない。もつとも、更正決定が当然無効と認められる場合は別であるが、刑事事件の無罪判決により更正決定が当然無効となるものとは解されず、その他原審認定の事情の下で本件更正決定を当然無効のものと解すべき事由を発見しえない。論旨は採用できない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

○昭和三三年第(オ)六九一号

上告人 大森達夫

被上告人 郡山税務署長

外一名

上告代理人桑名邦雄の上告理由

第一点 原判決は一の証拠のみを斟酌してその他の証拠調の結査についで斟酌しないで判決をなしたもので訴訟手続に違背して判決を為した不法の裁判で破棄を免れない。

判例 大審院昭和六年(オ)第一七八四号同七年三月二六日大民四部判決民集一一巻四七四号

原審控訴判決は其理由説明の部に於て「当裁判所も新たに次の一乃至四の判断を附加するのほか原判決(第一審判決)の理由記載をここに引用すると」判示するを以て右引用と係る第一審判決の理由説明の部の

一、第二回更正決定の取消の請求について、の表題の中

(2)の欄に於て

被告税務署長が昭和二三年六月一一日第一回更正決定を取消し、同月一六日課税価格を三〇四万六二七九円とする第二回更正決定をしたところ、原告はこれに対し同年七月一一日国税局長に第二回審査請求をしたことに当事者間は争がないが、

(イ) 被告税務署長は原告に於て右審査請求を取下げたから本訴は訴願裁決を経てない不適法なものであると主張するので、この点を考えるに、

乙第一号証(審査請求取下書)の存在と

証人 佐藤久治郎の証言 とを

綜合すれば原告ならびに其代理人と称する桑名邦雄の連名で第二回審査請求取下書(乙第一号証)が当時の被告税務署長佐藤佐久治郎に提出受理されはことが認められるが、

証人 桑名邦雄の証言 と

証人 大森春江の証言 と

原告本人 尋問の結果 とを

綜合すると右取下書の原告の記名は右桑名が記載しその押印は原告妻大森春江がなしたものでありこれに桑名が代理人として連署したものであることが認められる。

そこで右取下書の作成提出が原告の意思によるものであるかどうかをみると、

<1> 成立に争のない甲第一一、一二号証(共に内容証明郵便)によれば桑名邦雄は原告の代理人として原告と連署の上に第二回審査請求につき早期決定を要望した事実を認められ、

証人 佐藤佐久治郎の証言

によれば右桑名は取下書提出以外から原告の財産税につき原告代理人として文書と口頭で被告税務署長に意見を開陳した事実が認められる。

そのような事情から推測すれば右桑名は右審査請求事件につき原告から代理権を与えられて居たことが認定できる。

<2> 証人 桑名邦雄証言

同大森春江証言

甲第三一号証(弁護人選任届)

に依れば第二回更正決定による税金全額を納入し同時に第二回審査請求取下書を提出したことが認められ、

<3> 乙第三号証(接見表)

よれば桑名は本件財産税について示談することを勧めたことが認められ、

<4> 証人佐藤佐久治郎証言

によれば原告が身柄釈放直後被告税務署長であつた右佐藤を訪問して簡単な挨拶したことが認められる。

以上の事実を綜合して判断すれば原告は桑名と接見の際、同人の勧告により前記税額の納入と第二回審査請求の取下に同意し、この原告の意思に基いて桑名が右税額納入と前記取下書を提出したことを認めるのが相当である。

証人桑名邦雄、同大森春江の各証言中原告本人の供述中この認定に反する部分は採用し得ない。

と判示し更正決定に控訴審判決の理由説明の部の

一、第二回更正決定の取消の請求に関して、の表題中に、

当審証人今井貞良の証言によると控訴人がその代理人桑名邦雄を介して納入した前示税金は控訴人の友人今井貞良が控訴人妻大森春江から当時勾留中の控訴人の釈放に関連して右納入方について相談をうけ日東紡績株式会社より立替支払うよう工面をしてやつたものであるところ控訴人は釈放日の翌日右今井方を訪ね同人の右尽力に対し謝意を表したがその際右税金納入について格別不服を唱えていなかつたことが認められ当裁判所はこの事実をも前記税額の納入並に第二回審査請求の取下が控訴人の意思に基いたものであることの認定資料の一に加える。

当審における控訴人本人尋問の結果中この点の前示認定に抵触する部分は措信できないし当審証人大室三郎、花井百亀、大森五郎の各証言も右認定を動すに足るものでない。

と判示すれども、

上告人の上告意見は、

一、当事者間が提出した証拠は総て裁判所は其の判断の資料に供すべきものである。

判例 大審院大正六年(オ)第三一六号同年一一月三日大民三部判決 新聞一三七四号三四頁

然るに係らず原判決は右認定に関しては前掲各証書並証人の証言を斟酌の資料に供してあるが左記の証拠については全く斟酌を為さない違法がある。

(1) 甲第九号証ノ一、二、三

昭和二三年一一月二日の建物と電話の差押書。

(2) 甲第一〇号証ノ一、二

同年同月一七日の近日公売通知、且畳建具は建物の従物として差押の効力を及ぶ通知。

(3) 甲第一三号証

同年一二月四日郡山税務署印の仙台財務局長より控訴人宛の審査請求に依る審査決定は告発事件の解定後に決定見込の通知。

は各れも原告(控訴人)の当時面接禁止の拘留中で留守を掌る同人妻が原告の意思を考慮に入れず独断にて友人今井貞良に相談して金策を乞い夫の意思に寧ろ反して右第二回更正決定通りの税金完納するに至つた。その附帯として審査請求取下が納入の際突発的に発生したことであり右証言を斟酌せざるの不法ある外に、

(4) 前記証人今井貞良証言中

前掲摘示以外の事項、即ち当時の税務署長佐藤佐久治郎の来訪を求めて面談の上大森達夫の留置不在中妻春江の依頼により完納するに至つた場面の証言、本件取下書等は控訴人大森に無関係に取り行なわれた証言等全然斟酌に容れておらない不法がある。

第二点 原判決の被控訴人郡山税務署長の抗弁の当否に影響を及ぼすべき再抗弁を控訴人が主張したに係らずこれを看過してこれを再抗弁として記載なく、而もこれに対して審理判断せずして抗弁を採用した違法あり。て原判決は破棄を免れない。

判例 大審院大正一二年(オ)第七七二号同一三年三月一四日大民一部判決 新聞二二四七号二二頁

第二回更正決定の取消の請求に関して控訴人の請求に対する被控訴人郡山税務署長は「第二回審査請求は控訴人の意思に依つて取下げた」との抗弁につき原審昭和三二年一一月二七日の口頭弁論期日に於て控訴人は左記事項の同日附第二回準備書面を陳述したのである。

第二、更に次に主張並に抗弁する、の款に於て、

(1) 第二回更正決定の取消請求に関しての表題で、

一、被控訴税務署長の第二回更正決定(昭和二三年六月一一日――甲第六、七号証)に対して控訴人は第二回審査請求(同二三年七月一一日――甲第八号証)を仙台国税局長に提出した。然るに右税務署に於て調査又は審査決定しないのみか却つて同年一一月二日、四日の両日に亘り控訴人の不動産等の差押をした。(――甲第九、一〇号証)のみならず控訴人は被控訴税務署長の同年一月三〇日附告発に基く右財産税違反被疑事件のため、同年一二月八日より郡山拘置場に身柄の拘置され新聞紙上に大々的に発表されるに至つたので控訴人の家族の心配は一方ならず控訴人の妻春江は一まず税金を納入した方がよいと独断し控訴人の面接禁止の拘留中なるが故に同人の意思を考慮に入れず控訴人の友人今井貞良に相談して金策を乞い従前から財産税課税に関し不服で審査請求しておつたところの控訴人の意に反して右第二回更正決定通りの税額、延滞金、手数料等合計金三、五三八、五七二円九〇銭を今井貞良を通して日東紡績会社より借用して同年一二月一六日全額を納入した。

(甲第一四号証)

控訴人本人は翌二八日出所帰宅して始めて税金全額納入したことを聞知し驚いたのみならず己が意思に反して為した処為に対し妻及び同座者を叱りつけるに至つた。

二、上述の如く一二月の暮近く、而も三五四万余円の大金を控訴人の財産税違反嫌疑が全部解消するものでなければ何人たりとも好意的に貸与し為さないし又何人たりとも全額を納入しない世状である。右今井貞良が当座列席の佐藤税務署長に対し念に念を押して右事件解消を確め且右大金を持参した長崎繁次、花井百亀の両名並に控訴人妻春江、桑名邦雄が同席して右確認したればこそ控訴人妻が右大金を借受けて納税するに至つた。て右花井百亀が代つて即日指定の国税代理店富土銀行郡山支店に出頭して納税した。尚前記右署長列席の室で控訴人の税金嫌疑が解消する条件で控訴人の意考の如何に係らず審査請求取下げしてもよいと考え右取下書作成して被告税務署長に交付した。

<1> 其際控訴人妻春江は控訴人の面接禁止拘留の留守宅に存在しておる控訴人の印鑑を勝手に使用して控訴人名下に拇印し、桑名邦雄は委任権限なく且委任状なしに勝手に代理人と自称して記名押印したので適法のものでない。(乙第一号証)

<2> 尚桑名邦雄が係検事の面接許可を得て控訴人と面接時間は十分間の制限時間であつて且、控訴人は被疑事件に対しては抗争強硬意見を貫徹し妥協和解の意思は微塵もなく且選任うけた弁護人は示談勧告の余地が全然なく右勧告は毫も為さなかつたので税金の納入並に審査請求の取下の話が全然存在しなかつた。

仍て控訴人の意思に基いて税金納入並に前記取下の提出をしたものでは全然ない。

第三点 原判決は其判決理由錯語の違法ある裁判であるから破棄を免れない。仍て上告理由の一とする。

原判決の利用に係る第一審判決の理由説明の部

一、第二回更正決定の取消の請求について、の表題の、

(2)項の(イ)欄の<2>の部に於て左記判示せり。

「<2> 原告が被告税務署長の告発により、本件財産税につき脱税容疑で同年一二年八日から同月一八日まで身柄を拘束され福島地方検察庁郡山支部の取調をうけたことは当事者間に争いない。そして証人桑名邦雄、同大森春江の各証言と成立に争ない甲第三一号証(弁護人選任届)とを綜合すると、原告が身柄拘束を受けるや、桑名は原告の妻大森春江から善後策として第二回更正決定額を全部納入するよう取計い、並に金策を依頼され、なお同月一三日には原告の弁護人選任され、原告の為に種々奔走したこと、をして金策も出来たので同月一六日桑名が手続をして第二回更正決定による税額、延滞金等合計三五二万八五七二円九〇銭と云う大金を全額納入(納入の事実は当事者間に争がない)それと同時に前記審査請求取下書を提出したことが認められる。」

(1)項の(イ)欄の綜合の部に於て左記判示せり。

「以上の事実を綜合して判断すれば、原告は桑名の接見の際、同人の勧告により前記税額の納入並に第二回審査請求の取下に同意しこの原告の意思に基いて桑名が右税額納入並に前記取下の作成提出の手続をとつたものであると認定するが相当である。」

二、仍て上告人の意思は、

前掲(2)の部の判示と前掲綜合の部の判示とは其判断が相齟齬しておる違法あり。即ち二者相対比するに、

前部の判示は「桑名が原告の妻大森春江から本件脱税容疑身柄拘束取調の前後策として第二回更正決定全額納入の金策を依頼されて奔走し金策して右金額を納入し、それと同時に本件審査請求取下書を提出した」ことを示しており要は桑名が右大森春江の主動的依頼に基いて右税額納入し且それを同時に本件審査請求取下書を提出したとあることに帰する。

後部の判示は「原告は桑名の勧告により第二回更正決定金全額納入並に本件審査請求取下書に同意しこの原告の意思に基いて桑名が右税額納入並に前記取下書を提出した」ことであり要は桑名は原告の依頼に基いて右税額納入と且それと同時に本件審査請求取下書を提出したとの判定である。結局前者は大森春江の依頼に依る行動であり、後者は控訴人の依頼に依る行動を示す。

一方に於て桑名は右納税と右取下が妻春江の依頼に基いて行動したと断定すれば必ずしも原告の依頼や意思を云々する要はなきのみならず他方に於て桑名が右納税と右取下が原告の意思に基いて行動したと判定すれば春江の依頼を論義する必要はないのである。尚桑名の右納税が妻春江の依頼であり右取下が原告の依頼であれば斯の如く判断すべきものであり、右納税と右取下が両人の依頼であれば両人の依頼あると判断すべきものである。

要するに前記の判示説明と後記の判示説明との両判断が理由齟齬、審理不尽の不備不法あること洵に明瞭である。

第四点 原判決は採証の法則を違いて不法に控訴人に対し不利な判決と為した違法の裁判である。即ち、

一、原審判決の引用に係る第一審判決の理由説明の部の、

第二回更正決定の取消の請求について、の表題中、

(2)項の(イ)欄の

<3> 成立に争ない乙第三号証(昭和二三年一二月一三日附、原告との接見表)に依れば、原告は接見禁止を受けていたが、桑名は同年一二月一三日弁護人として検事の許可をうけた上、郡山の拘置場で原告と接見し、その時間は一時間四〇分にわたつたこと、この際桑名は本件財産税について示談することを勧めたこと、これに対し原告は同弁護人に謝礼の言葉を述べたことが認められる。

一、上告の主張は左の如し。

第一、財産税逋脱刑事事件の弁護人選任、並に、其選任書は財産税課税の審査請求権の民事上の委任権限を包含するものでない。

原告は同人に関する本件財産税につき脱税容疑事件で、同年一二月八日より福島地方検察庁郡山支部の取調べをうけて身柄を右拘置場に拘束されて、桑名邦雄が右事件の弁護人に選定されたが、右弁護人選定されたことと、弁護人選任届を出したことが、民事上の本件財産税の審査請求事件、而しその債権債務の金銭支払関係の請求権並に其抛棄の権限を委任したことは全然なく、右刑事弁護選任と本件審査請求とは全く別事件である。

弁護人として選任された桑名邦雄は原告本人の右拘留中で右財産税審査請求権に関しては民法第六九七条第一項の事務管理する権限を有するのみある、権限の定なき代理人の権限は民法第一〇三条に基き本件審査請求の保存行為と其利用を目的とする行為のみを許容されておるにすぎないのである。而して民事債権の請求の授権に関して債権の一部の免除をするに関しても右免除する権限を包含しないものである。

判例 大審院昭和五年(オ)第一三七六号同年一二月二三日大審院民事二部判決

第二、接見時間自一一時一〇分至一二時五〇分の一時間四〇分にわたつたことありや否や、然らず。乙第一号証接見表には右の記載あれども普通事例としては一〇分乃至二〇分であつて面接禁止の弁護人に対し一〇分乃至二〇分であつて右の如く一時間以上の長時間に亘る接見許可を許容すること絶対にないし右立会人たる大室三郎証言に依れば亡山川某の書きたるもので証人として時間の点は知らざる旨の証言があり証人桑名邦雄の証言には右の如き長き面接でない旨の証言あり。

仍て接見時間一時間四〇分の事実を証拠として採用すべきものでない。

第三、其際桑名は本件財産税につき示談することを勧めたるや、然らず。証人桑名邦雄の証言、控訴本人の陳述で誠に明瞭である。

第四、これに対し原告は同弁護人に謝礼の言葉述べたことありや、然らず。証人桑名邦雄の証言、控訴本人陳述に於て証明十分であり、乙第一号証の談話の要領欄の「被疑者誠ニ有難ウ御座居マス」は遠路東京より郡山に来てくれたとの謝礼であることが次項の「先方ガ余リデアル、私ハ何処行ツテモ敗ケル心配ハナイカラ宜敷ク御願イマス」は検察庁の取調は脱税事実ありとの強便意見であるが控訴人は其取調べにも、公判となつても脱税事実なしとの確い信念を持つておるから弁護人たる桑名も其方針でおつてくれとのことで、従つて和解や交渉や納税する必要がないとの結論となつたことが判明しておる。乙第一号証は原判決認定事実とは相反する事実の立証ともなるものである。

以上の反駁事実とこれが立証するに係らずこの挙に出でず被控訴人の抗弁を認定したる不法の裁判である。

第五点 原判決は当事者が提出した証拠は総て其判断の資料に供すべきに係らずこれを為さざるの違反の裁判で破棄を免れない。

仍て上告理由の一とする。

判例 大審院大正六年(オ)第三一六号同年一一月三日大民三部判決 新聞一三七号三四頁

一、原審判決の引用に係る第一審判決の理由説明の部の、

第二回更正決定の取消の請求についての表題中、

(2)項の(ロ)欄に於て左記判示しておる。

(ロ) 原告は審査請求の取下につき要素の錯誤があつたと主張し証人桑名邦雄、同大森春江の各証言によれば、桑名が右審査請求取下書を提出して第二回更正決定に基く税額を納入するについて佐藤署長は原告に係る財産税法違反被疑事件の解決につき努力する旨桑名に約束したことが認められ(原告は佐藤が告発の取消を約束したと主張し証人桑名の証言中これに添う部分があるが証人佐藤久治郎の証言と対比して採用しがたい。また証人佐藤の証言中前記認定に反する部分は採用しない)しかし右約束は漠然たる、また好意的たるものにすぎないから原告がそのような約束を信じて審査請求を取下げたとしてもこれは取消の縁由にすぎないと云うべきである。

そうすると右取下が錯誤により無効であるという原告の主張は失当である。従つて第二回審査請求は取下によりその効力を失つたわけである。

二、上告人の意見

前述の審査請求取下に要素の錯誤があつたか否かの点に関し前記の通り証人桑名邦雄、同大森春江、同佐藤佐久治郎証言が斟酌され判断の資料に供されたが其面談の立役者であつた最も重要人物たる原審証人今井貞良の証言を其判断の資料に供さなかつたは恂に不法であり、従つて控訴人に不利なところの判定に陥つたもので違法あり。

第六点 原判決は法律の適用又は解釈を謬つた違法の裁判であつて破棄を免れない。

即ち、

一、原審判決引用に係る第一審判決の理由説明の部の、

一、第三回更正決定の取消の請求についての部に於て左記判示しておる。

被告税務署長が昭和二六年六月一日第二回更正決定につき五〇万円の減額訂正をしたこと、同年同月一四日再び五〇万円を増額して課税価格三〇四万六二七九円の第三回更正決定を公告したこと、右更正決定に対し原告が同年七月六日国税局長に対し第三回審査「請求をし、同局長が同年八月一〇日請求原因(ロ)記載の審査」決定を公告したことは当事者間に争がない。

原告は右審査決定には理由の附記がないから無効だと主張するが財産税法による審査決定に理由を附記しなければならず、これがなければ決定が無効であると云う根拠はどこにもない。国税徴収法第三一条の三第五項(昭和二五年三月三一日法律第六九号による改正後のもの)には審査決定に理由の附記を要する条項があるが財産税法第五一条ないし第五四条が本件審査決定当時まだ存在している(同年一一月二六日法律二六三号より廃止)ので本件の場合これによるべきで前記国税徴収法第三一条の三の適用はないのである(同法第三一条の二第一項、第一条)。それゆえ右決定には何等原告主張の違法はなく有効である。

そうすると原告は特例法第五条第一項、第四項により右審査決定の送達があつたとみなされる昭和二六年八月一七日(成立に争いない甲第二〇号証によれば原告が決定の受領を拒んだので国税徴収法第四条の一〇により公告したものと認められこの場合公告の初日から七日後送達があつたとみなされる。)から六ケ月以内に本訴を提起すべきものであつた。この場合特例法第五条第三項但書は適用がない。従つて第三回更正決定に対する本訴(昭和二八年六月三〇日提起)は出訴期間経過後のもので不適法であるから本訴中当該部分は却下すべきものである。(原告出張のように本訴が国税徴収法第三一条の四に基くもの「であるとしてもその要件も具備せず、出訴期間も徒過している。)」

二、上告人の意見は左記の通りである。

1、前述の第三回更正決定には理由の附記すべき法的根拠は下記の如し。

第三回更正決定をした昭和二六年六月一四日現在並に第四回更正決定をした同年八月一〇日現在に於ては既に国税徴収法につき同二五年法律第六九号が同年四月一日以降施行されており且同二六年法律第七八号新法が施行されておるので後者の施行に依り同附則一六項五に於て財産税を明記加入しておる関係上本件財産税に関して国税徴収法を適用されることになつたのであり同法第三一条の三<5>項の適用をうくべきものであるから第三回更正決定には「理由を附記したる書面を以て審査請求者に対して通知することを必要とする」ものである。

従令財産税法第五一条乃至第五四条が右審査決定当時まだ存在しているとしても一般法たる国税徴収法を排除すべき理由はなく当局に於ても其見解を支持しておる。

2、仮りに前記の第三回更正決定が昭和二六年六月一四日に為されたとしても控訴人は同年七月六日前記の如く審査請求を為した。

これに対する甲二〇号証

昭和二六年八月一〇日仙台国税局長より控訴人宛の財産税課税価格審査決定通知す

一、財産税価格三、〇一二、〇三八円

昭和二六年七月六日附提出に係る財産税価格再更正に対する審査請求について右の通り決定したから財産税法第五二条の規定により通知します。

右昭和二六年八月一五日通知書発送したる処之れが受取をこばみたるにつき国税徴収法第四条の一〇に依り公告する。郡山税務署長は国税徴収法を援用して公告するの処置に出でておるが同税収法に依る理由附記が缺除しておる違法のものである。仍て前記昭和二六年六月一四日も為した控訴人の第三回審査請求に関して未だに審査決定が無いことに帰する。

3、爰に経過を記するに本件財産税に関して左記の通りであつて、

昭和二一年三月三日 財産調査時

同 二二年二月一五日 申告書提出し

二〇日 追加〃

同年 二月二七日 納税額通知あり

同年 一二月二七日 第一回更正決定

同 二三年一月一四日 第一回審査請求し

同年 六月一一日 前決定の取消通知

同年 六月一六日 第二回更正決定

同年 七月一一日 第二回審査請求し

同年 一二月四日 刑事事件解決後審査委員会に附議通知

同年 一二月八日 上告人収監

一六日 税金納入す

一八日 〃出監

同 二四年一月二七日 上告人起訴

同 二五年一〇月一七日 上告人無罪

検事控訴

同 二六年二月一三日 無罪判決送達

同 二月二八日 審査請求催促

同 六月一〇日 第三回更正決定

同 七月六日 第三回審査請求し

同 八月一〇日 仙台国税局長通知

同 二七年五月一七日 上告人免訴判決

同 九月一日 第四回審査並に過払払戻請求

同 二八年六月三〇日 本件出訴

4、要するに前記第二回審査請求に対し被上告人より刑事事件解決以後に審査委員会に附議する通知より其後第二回審査請求の取下げると否とに係らず上告人が起訴され審理の結果第一審裁判所で無罪となり検事控訴中無罪中の一部事実に関して被上告人の第三回更正決定がありこれに対して更に第三回審査請求を為したがこれに対し審査決定が未だに上告人が受領しておらないのみならず被上告人の告発による刑事事件が遂に昭和二七年五月一七日免訴判決確定しても前述の刑事事件解決後に審査委員会に附議する通知を受けた上告人は第四回審査並に過払払戻請求しても音沙汰なきを以て本訴に及んだものであつて裁決を受け得なかつたものである。

5、提訴の期限に関しては、

昭和二五年法律第六九号に依る改正国税徴収法は同年四月一日施行され同附則6項に「この法律施行前にして租税の賦課徴収に関する処分に対する審査、訴願及び訴訟についてはなお従前の例による」と明定されており、

而して財産税法は前掲改正国税徴収法以前に施行せられておつたもので、而も訴訟提起には期限の制定が無い。依つて本件財産税法に基く過払払戻請求提訴には期限の制限が無いのである。

又他面本件の如く財源に関し告発告訴に基づく刑事事件の喚起した審査は刑事先決の法則の下に処置すべきもので、而も複雑且抗争の存した事件で審理判決も稀に見る多年に渡つた事案に於ては行政事件訴訟特別法第五条第三項但書の所謂訴提起が処分のあつたことを知つたときから六月以内に出来なかつた正当の事由が存在したものに該当するから本件提起も適法として処置すべきものである。

以上の主張は孰れも控訴審に於て昭和三二年一一月二七日の口頭弁論期日に於て陳述したる同日附準備書面に記載しておる事項である。仍て上告の理由とする。

第七点 原判決は提出した証拠調を為さずして控訴人に対し不法な不利の判決をした違法の裁判であるから審理不尽、理由不備の判決として破棄を免れない。仍て上告理由の一とする。

即ち、

原判決は理由説明の部第三項に換言すれば、

三、被控訴人国に対する請求に関して、の表題の項に左記判示せり。

この点について控訴人は国庫に対する控訴人の前示財産税等金三、五三八、五七二円九〇銭の納入はその後、控訴人に対する財産税法違反被告事件が第一審で無罪となり、ついで控訴審で免訴と確定したことにより過誤納であることが明らかになつたから控訴人は国税徴収法施行規則第三一条の五により当然その還付請求権を有する旨主張するので案ずるに控訴人が原判決添付別表第五記載のとおりの課税価格の遺税を公訴事実とする財産税法違反被告事件の被告として昭和二四年一月二七日福島地方裁判所郡山支部に起訴され、同裁判所で審理の結果同二五年一〇月一七日犯罪の証明がないとして無罪の判決をうけたこと、更に検事の控訴により右被告事件は仙台高等裁判所に係属したが昭和二七年五月一七日大赦を理由に控訴人が同裁判所より免訴の判決をうけそれが確定したことは当事者間に争がない。しかしながら右事実によれば右被告事件に付いては結局大赦による免訴が確定したものにすぎないものであつて財産税の過誤納を疑わしめる節はあるにしてもその過誤納の事実が確定したものとは云へない(仮に右被告事件に於て右過誤納の事実が認められたとしてもそれは控訴人の刑事責任の有無を判断する前提となるだけのもので、そのことから直ちに控訴人に税法上の過誤納にかかる税金の還付請求権が生じるものではない)から右主張はその点で既に失当として採用出来ない。

上告人の主張は左の通りである。

一、控訴人は判示のとおり財産税等金三、五三八、五七二円九〇銭を納入したところ其後控訴人に対する財産税法違反被告事件として第一審審理の結果昭和二五年一〇月一七日無罪の判決をうけ検事の控訴の結果更に審理を進めておる途中同二七年五月一七日大赦に拠り仙台高等裁判所で免訴の判決をうけて確定した。

右第一審及び控訴審の審理証拠に依ると嚢に納入した財産税額に関して過誤納入となつたのである。

一、本件に於て右過払金を不当利得として返還請求しておつたもので右過払として支払つた立証として第一審判決添付別表第三

(1) 日東紡績株式会社に対する債権一、一〇〇、〇〇〇円の不存在のために(起訴第一事実)

甲第二三号の一 第三回公判調書(証人小口理一証言)

〃 二 同(〃堀尾喜一〃)

〃 三 証(片倉三平の作成)

〃 四1 約束手形(額面一〇〇、〇〇〇円)

〃 2 同(〃五〇、〇〇〇円)

〃 3 同(〃五〇、〇〇〇円)

〃 4 同(〃一三〇、〇〇〇円)

〃 5 同(〃一四八、〇〇〇円)

〃 6 同(〃三〇〇、〇〇〇円)

〃 7 同(〃一五〇、〇〇〇円)

〃 五 工作物築造許可申請書

〃 六 第六回公判調書(証人長崎繁次証言)

〃 七 同(〃小口理一〃)

〃 八 第一九回公判調書(〃金村松雄〃)

〃 九 受領証

〃 一〇 一月分給料仕訳書

〃 一一1 御積書

〃 2 請求書

〃 3 領収書

〃 一二1 第一三回公判調書(被告人大森調)

〃 2 第一四回 (〃)

〃 3 第二一回 (〃)

〃 4 第二三回 (〃)

〃 一三 第四回 (〃)

〃 一四 金員預り証

〃 一五 検事岡崎悟郎殿の書簡

〃 一六 第一五回公判調書 (〃)

(2) 日本電興株式会社に対する債権五〇万円の不存在のための立証

甲第二四号証の一 諸材料納入代

〃 二 証明書(昭和二三年二月四日附)

〃 三 同(郡山税務署長宛)

〃 四 林伝作成書(昭和二三年一〇月二九日附)

〃 五 覚書

〃 六 林伝作成書(昭和二四年二月一八日附)

〃 七 第四回公判調書(証人林伝証言)

〃 八 秋田銀行郡山支店長証明書

〃 九 証明書(東京芝浦電気株式会社)

〃 十 第一五回公判調書(被告人大森調)

〃 一一 同(証人成田謙哉)

〃 一二 第一三回公判調書(被告人大森調)

(3) 鴫原弥作に対する債権一五万円の不存在のため立証

甲第二五号証一 証 (一五〇、〇〇〇円)

〃 二 受取証(一五〇、〇〇〇円)

〃 三 戸籍謄本(大森達夫分)

〃 四 同(〃)

〃 五 普通貯金通帳(大森節子分)

〃 六 郵便はがき

〃 七 電信送金受領証

〃 八 普通貯金通帳(大森静子分)

〃 九 大森ツル子作成書

〃 一〇 第五回公判調書(証人大森春江証言)

〃 一一 第六回〃(〃大森静子〃)

〃 一二 第一三回〃(〃被告本人〃)

〃 一三 第八回〃(〃大森五郎〃)

(4) 鷺野谷清寿、真船栄良の木炭代前渡債権の不存在の立証

甲第二六号証の一 第四回公判調書(証人真船栄良の証言)

〃 二 第七回〃(〃)

〃 三1 封筒 (鮫川村真船栄良)

〃 三2 真船栄良の作成書

〃 三3 真船栄良の確認書

〃 四 証明書(秋田銀行郡山支店分)

〃 五 送り状(昭和二一年一月七日附)

〃 六 送り状(昭和二一年二月二八日附)

〃 七1 送り状(昭和二一年三月一五日附)

〃 七2 同(無)

〃 八 昭和二一年三月より五月末までの精算書

〃 九 第七回公判調書(証人野口義家証言)

〃 一〇 第一三回〃(〃大森被告人〃)

〃 一一 第一五回〃(〃成田謙哉〃)

(5) 細沼町所在建物の所有権不存在の立証

甲第二七号証一 別件訴状

〃 二1 東京芝浦電気株式会社よりの封筒

〃 二2 鈴木信男の書状

〃 三 第五回公判調書(証人田村護証言)

〃 四 第五回 (〃鈴木信男〃)

〃 五 第六回 (〃安藤和雄〃)

〃 六 第一四回 (〃大森本人〃)

〃 七 第二一回 (〃)

〃 八 家屋の登記簿謄本

(6) 貨物自動車並エンジンの不存在の立証

甲第二八号証の一 譲渡証

〃 二 領収証

〃 三 証明証

〃 四 柳町大沼正吉の書

〃 五 貨物自動車廃車証明書

〃 六 大森達夫被告(昭和二〇年一一月二四日附)

〃 七1 御願の証明書

〃 2 同

〃 八1 当座勘定受入副報告書六八五、一五〇円

〃 2 同三五三、八九七円

〃 九1 領収証(金六、六六二、五〇銭)

〃 2 同(金三、三八〇、九四銭)

〃 一〇 念書

〃 一一1 第一四回公判調書(被告人大森証言)

〃 2 第二一回 (〃)

〃 3 第一一回 (〃)

〃 4 第一五回 (〃)

〃 5 第一八回 (〃)

〃 6 第一六回 (〃)

〃 7 第一九回 (〃)

〃 8 第二〇回 (〃)

〃 一二 昭和二一年一二月一三日契約フオード貨物自動車一台

〃 一三 証明書

〃 一四 第一八回公判調書(証人遠藤嘉平証言)

〃 一五 請求書

〃 一六 領収証(二二、〇〇〇円也)

〃 一七 請求書

〃 一八 領収書(二、五〇〇円也)

〃 一九 第一〇回公判調書(証人吉田清寿証言)

〃 二〇 第一八回〃(〃遠藤嘉平〃)

〃 二一 第一九回〃(〃草野武〃)

〃 二二 譲渡証

〃 二三 売渡証

〃 二四 検証調書

〃 二五 証人尋問調書(証人件 勇証言)

〃 二六 第九回公判調書(〃野口義家〃)

〃 二七 第一一回〃(〃西条繁雄〃)

〃 二八 第一二回〃(〃浜島源平〃)

〃 二九 第一二回〃(〃吉田清寿〃)

(7) 東京芝浦製作所に対する売掛代金債権の不存在(不起訴の分)

甲第二三号証一三 第四回公判調書(証人田川実吾証言)

〃二三号証一五 東芝社長石坂泰三からの回答書

〃二三号証一六 第一五回公判調書(被告本人調書)

一、仍て上告人は原審に於て無罪の判決そのものをのみ援用して以て過誤納の税金の還付請求したのでなく前掲の準備書面にも陳述し且、前記の各書証を提出して以て其証拠に依つて課税対照の財源の存在せずして金三五三万八五七二円を昭和二三年一二月一六日に納入したのであるから国又は国税局に於て審査せずとも裁判所に於て審理してこれが実質的の御決定を求めて罷まない次第である。然るにこれを為さざる原判決は誠に無責任で且不法の裁判である。

(以上)

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